研究

松谷研では、ビッグデータおよび人工知能(AI)技術利活用のための基盤システムを研究しています。既存のソフトウェアやネットワーク技術に加え、アクセラレータを必殺技的に入れ込むことで他では真似できない「ワクワクするような研究」を、日々、楽しんでいます。具体的には、以下のプロジェクトに取り組んでいます。これらは元々はB4さんの卒論から派生した研究テーマです。一緒に研究してくれる人たちを募集しています!

もう少し詳しい研究紹介(英語)はここをご参照ください。


ビッグデータ利活用のための NOSQL アクセラレータ(2013年〜)

ビッグデータとは、生物、気象、物理、金融、インターネット、ネットワークサービスなどの分野で発生する莫大な量の情報のことです。このような大規模なデータを蓄積および解析し、その傾向をつかむことで、ビジネスの意思決定、流行の予測、犯罪防止、道路交通状況判断などに応用できると期待されています。
ビッグデータの蓄積および検索には、これまでのリレーショナルデータベースに加えて、Google の BigTable に端を発する構造型ストレージ(巷では NOSQL と呼ばれる)の利用が注目されています。
松谷研では10ギガビットイーサネットを4本(40Gbps 相当!)備えた FPGA ボードを多数用いて、NOSQL のためのアクセラレータを開発しています(下図)。

実際に、ドローン(UAV)による空撮データから集めた3次元地形データ、および、客層分析システム(カメラ画像から通行人の年齢性別を判定)から出力された通行人データを蓄積し、それを高速に検索および解析できるようにしています。
また、ビットコイン(ブロックチェーン)に関する研究も密かに行われています。
※本研究の一部は、JST 戦略的創造研究推進事業(さきがけ)のご支援を受けています。


FPGA を用いた機械学習・ビッグデータ解析の高速化(2014年〜)

機械学習とは、人が行っているような学習機能をコンピュータにやらせようという人工知能技術の一種です。例えば、与えられたデータの中から有益なルールや知識を導き出すために使われます。
松谷研では、大量のデータ(ビッグデータ)の中から有益な情報のみを抽出できるようにすべく、機械学習の高速化に取り組んでいます。具体的には、10ギガビットイーサネットを備えたネットワークインタフェースカード(NIC)上に機械学習アルゴリズムを実現し、たくさんのセンサーデータの中から異常値(不審者とか)や変化点(株価の急激な変化とか)を検出できるようにしました。このような「機械学習する NIC」によって、10Gbps に近い外れ値検出性能を実現できました。
最近では、たくさんの計算機でディープラーニングを行う際に必要となる分散機械学習を高速化する研究がうちの研究室的には流行りです。

他にも Hadoop や Spark、Spark Streaming のようなビッグデータ解析フレームワークを FPGA を用いて高速化するという研究も行っています!
※本研究の一部は、NEDO IoT推進のための横断技術開発プロジェクトのご支援を受けています。


VR 向けラックスケールアーキテクチャ(2015年〜)

Google や Facebook はデータセンターという設備を持っていて、そこではたくさんの計算機が動いています。松谷研ではそういったデータセンターを高効率化するための研究をしています。具体的には、下図にあるように、計算機を入れておく入れ物(ラックと呼ぶ)の中に、フルセットの計算機ではなくて、CPU、メモリ、ディスク、GPU、FPGA のような計算機の「部品」をたくさん入れておき、必要に応じてこれらの「部品」たちを接続して、オンデマンドにソフトウェア定義でフルセットの計算機を作ることができます。計算が終わったら「部品」たちはリリースします。そうすれば「部品」たちは別の用途に使えるので大変効率的です。
これを使って VR(Virtual Reality)向けの計算サービスを実現しようとしています。うまく行けば、ユーザはパソコンなしで VR を楽しめるようになるはずです!


光ビームを用いたデータセンターネットワーク(2012年〜)

インターネットの検索エンジンに加え、Facebook などの SNS、オンラインショッピング、オンラインゲーム、動画共有などのネットワークサービスを利用している人も多いと思います。このようなサービスのためにたくさんの計算機が使われています。通常、計算機はサーバラックに格納され、多数のサーバラックがデータセンターと呼ばれる施設に設置されています。
松谷研では、サーバラックの上にコリメータレンズを設置し、このレンズを使って光信号を送受信することでサーバラック間を 40Gbps の光ビームで通信できるようにしています。下図では、光ビームをミラーに反射させて、2つのコリメータレンズ間で通信をしています。
レンズの向きを変えれば任意のサーバラック間に 40Gbps リンクを必要に応じて形成できます。我々はこれを「40Gbps ハイウェイ」と呼んでいて、このような光ビームを使って仮想マシンやビッグデータを移送することを研究しています。

※本研究は、国立情報学研究所鯉渕研究室と共同で進めています。
※本研究の一部は、総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)のご支援を受けています。


GPU(グラフィックス処理ユニット)を使ったソーシャルグラフの解析(2013年〜)

Facebook などの SNS を利用している人も多いと思います。ソーシャルグラフとは人と人の「つながり」を表すネットワークのことです。例えば、Facebook ではノード数は10億人以上、平均次数(あるノードと直接つながっているノード数、平たく言うとお友達の平均数)は200前後と言われています。SNS はインターネット上の交流の他にも、顧客のソーシャルグラフをもとにしたリコメンデーションエンジンへの応用が期待されています。
ソーシャルグラフはとても大規模になるため、この解析は計算がとても重いです。そこで、松谷研では GPU(グラフィックス処理ユニット)を使ってソーシャルグラフの解析を高速化しています(下図)。GPU と言うと PC 上で動作する 3D ゲームでの使用を思い浮かべる人も多いと思いますが、ソーシャルグラフの探索をGPUを使って並列実行することで200倍以上の高性能化を実現しました。

※本研究の一部は、JST 戦略的創造研究推進事業(さきがけ)のご支援を受けています。


チップ間無線を用いた3次元メニーコアプロセッサ(2009年〜)

みなさんが使っているパソコンの CPU でもマルチコア化が一般的になりました。1つの CPU に2個もしくは4個のプロセッサコアが実装されていたりします。さらに、研究レベルでは数十個から数百個のプロセッサコアが集積されたチップが研究されていて、これらは「メニーコアプロセッサ」と呼ばれます。
このようなチップ上の多数のプロセッサは Network-on-Chip(NoC)と呼ばれるネットワーク構造を用いてデータのやり取りを行います。松谷研では、このようなメニーコアチップを垂直方向にたくさん積層することを研究してきました。
世界的に見ても特にユニークなのがワイヤレス3次元 NoC の研究です(下図)。これは、チップ内の水平ネットワークは従来通りのメタル配線を用いますが、チップ間の垂直ネットワークには慶應義塾大学電子工学科黒田研究室で開発された無線技術を用います。チップ間の接続が非接触の「ワイヤレス」であるという特徴を活かし、後からチップを入れ替え可能な計算機を研究しています。

※本研究は、情報工学科天野研究室と共同で進めています。また、米国カーネギーメロン大学、南カリフォルニア大学とも共同研究を行っています。