研究

松谷研では、ビッグデータおよび人工知能(AI)技術利活用のための基盤システムを研究しています。既存のソフトウェアやネットワーク技術に加え、アクセラレータを必殺技的に入れ込むことで他では真似できない研究をやっています。具体的には、以下のプロジェクトに取り組んでいます。これらは元々はB4さんの卒論から派生した研究テーマです。一緒に研究してくれる人たちを募集しています!

論文業績を含むもう少し詳しい研究紹介(英語)はここをご参照ください。


工場ビッグデータ利活用のためのAI基盤(2017年〜)

ビッグデータというとFacebookやTwitterなどのネットワークサービスのビッグデータが真っ先に思い浮かぶかもしれません。しかし、それと同等かそれ以上に製造現場で生じるビッグデータの利活用は重要です。実際、日本には高い技術力によって高い世界シェアを有する多数の産業がたくさんあります。このような製造現場にこれまで松谷研で研究してきた高性能ビッグデータ処理技術人口知能技術(個々の技術の詳細は下の説明を読んでください!)を導入すれば、製品や製造装置の故障検知、故障予知、最適化などが可能になります。
下図はその一例です。3次元プリンタ、CNC、送風機などに使われているモーターの振動を測定することで故障や異常などいろいろなことが分かります。これをディープラーニングによって学習することで故障検知や故障予知を自動化する課題に取り組んでいます。松谷研で研究してきた技術をきちんと社会実装することが目標です。

※本研究の一部は、JST戦略的創造研究推進事業CRESTのご支援を受けています(2017年10月から)。


ビッグデータ処理の高性能化(2014年〜)

ビッグデータとは、生物、気象、物理、金融、インターネット、ネットワークサービスなどの分野で発生する莫大な量の情報のことです。このような大規模なデータを蓄積および解析し、その傾向をつかむことで、ビジネスの意思決定、流行の予測、犯罪防止、道路交通状況判断などに応用できると期待されています。
ビッグデータを利活用するには、いろいろな機能(ソフトウェア部品)が必要です(下図)。例えば、ストリームデータを集める機能、集めたストリームデータを逐次的に処理する機能、貯めてから一括処理する機能、データを蓄積検索する機能などです。機械学習(ディープラーニング)も重要です。

松谷研ではこれらのソフトウェア部品を最近流行りのFPGA(再構成可能ハードウェア)やGPU(グラフィックス処理ユニット)といったアクセラレータを使って高性能化しています。
※本研究の一部は、JST戦略的創造研究推進事業さきがけのご支援を受けました(2013年10月から2017年3月)。また、JST戦略的創造研究推進事業CRESTのご支援を受けています(2017年10月から)。


ビッグデータ蓄積検索の高性能化(2013年〜)

ビッグデータの蓄積および検索には、これまでのリレーショナルデータベースに加えて、GoogleのBigTableに端を発する構造型ストレージ(巷ではNOSQLと呼ばれる)の利用が注目されています。
松谷研では10ギガビットイーサネットを4本(40Gbps相当)備えたFPGAボードを多数用いて、様々なタイプのNOSQLを高性能化しています(下図)。

2016年くらいまでは、客層分析システム(カメラ画像から通行人の年齢性別を判定)から出力された通行人データを蓄積し、それを高速に検索できるようなシステムを研究していました。一方、現在では、仮想通貨として注目を浴びているビットコイン(ブロックチェーン)をメインの応用先に据えています。実際、ビットコインも裏ではデータベースが動いていますから、松谷研で開発しているNOSQLアクセラレータの応用先としてとても有望なのです。
※本研究の一部は、JST戦略的創造研究推進事業さきがけのご支援を受けました(2013年10月から2017年3月)。


機械学習・ビッグデータ解析の高性能化(2014年〜)

機械学習とは、人が行っているような学習機能をコンピュータにやらせようという人工知能技術の一種です。例えば、与えられたデータの中から有益なルールや知識を導き出すために使われます。
松谷研では、大量のデータ(ビッグデータ)の中から有益な情報のみを抽出できるようにすべく、機械学習の高速化に取り組んでいます。具体的には、10ギガビットイーサネットを備えたネットワークインタフェースカード(NIC)上に機械学習アルゴリズムを実現し、たくさんのセンサーデータの中から異常値(不審者とか)や変化点(株価の急激な変化とか)を検出できるようにしました。このような「機械学習する NIC」によって桁違いに高性能は外れ値検出や変化点検出を実現できました。

2016年以降は、たくさんの計算機でディープラーニングを行う際に必要となる分散機械学習の高性能化に力を入れています。
他にも、Hadoop、Spark、Spark Streamingなどのビッグデータ解析フレームワークをGPUクラスタやFPGAを用いて高速化する研究も行っています。
※本研究の一部は、JST戦略的創造研究推進事業さきがけのご支援を受けました(2013年10月から2017年3月)。また、NEDO IoT推進のための横断技術開発プロジェクトのご支援を受けています(2016年10月から)。


VR向けラックスケールアーキテクチャ(2015年〜)

GoogleやFacebookはデータセンターという設備を持っていて、そこではたくさんの計算機が動いています。松谷研ではそういったデータセンターを高効率化するための研究をしています。具体的には、下図にあるように、計算機を入れておく入れ物(ラックと呼ぶ)の中に、フルセットの計算機ではなくて、CPU、メモリ、ディスク、GPU、FPGAのような計算機の「部品」をたくさん入れておき、必要に応じてこれらの「部品」たちを接続して、オンデマンドにソフトウェア定義でフルセットの計算機を作ることができます。計算が終わったら「部品」たちはリリースします。そうすれば「部品」たちは別の用途に使えるので大変効率的です。
これを使ってVR(Virtual Reality)向けの計算サービスを実現しようとしています。うまく行けば、ユーザはパソコンなしでVRを楽しめるようになるはずです!


光ビームを用いたデータセンターネットワーク(2012年〜)

インターネットの検索エンジンに加え、FacebookなどのSNS、オンラインショッピング、オンラインゲーム、動画共有などのネットワークサービスを利用している人も多いと思います。このようなサービスのためにたくさんの計算機が使われています。通常、計算機はサーバラックに格納され、多数のサーバラックがデータセンターと呼ばれる施設に設置されています。
松谷研では、サーバラックの上にコリメータレンズを設置し、このレンズを使って光信号を送受信することでサーバラック間を40Gbpsの光ビームで通信できるようにしています。下図では、光ビームをミラーに反射させて、2つのコリメータレンズ間で通信をしています。
レンズの向きを変えれば任意のサーバラック間に40Gbpsリンクを必要に応じて形成できます。我々はこれを「40Gbpsハイウェイ」と呼んでいて、このような光ビームを使って仮想マシンやビッグデータを移送することを研究しています。

※本研究は、国立情報学研究所鯉渕研究室と共同で進めています。
※本研究の一部は、総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)のご支援を受けています(2013年4月から2014年3月、2016年4月から2018年3月)。


GPU(グラフィックス処理ユニット)を用いたソーシャルグラフの解析(2013年〜)

FacebookなどのSNSを利用している人も多いと思います。ソーシャルグラフとは人と人の「つながり」を表すネットワークのことです。例えば、Facebookではノード数は10億人以上、平均次数(あるノードと直接つながっているノード数、平たく言うとお友達の平均数)は200前後と言われています。SNSはインターネット上の交流の他にも、顧客のソーシャルグラフをもとにしたリコメンデーションエンジンへの応用が期待されています。
ソーシャルグラフはとても大規模になるため、この解析は計算がとても重いです。そこで、松谷研ではGPU(グラフィックス処理ユニット)を使ってソーシャルグラフの解析を高速化しています(下図)。GPUと言うとPC上で動作する3Dゲームでの使用を思い浮かべる人も多いと思いますが、ソーシャルグラフの探索をGPUを使って並列実行することで200倍以上の高性能化を実現しました。

※本研究の一部は、JST戦略的創造研究推進事業さきがけのご支援を受けました(2013年10月から2017年3月)。


チップ間無線を用いた3次元メニーコアプロセッサ(2009年〜)

みなさんが使っているパソコンのCPUでもマルチコア化が一般的になりました。1つのCPUに4個のプロセッサコアが実装されていたりします。さらに、研究レベルでは数十個から数百個のプロセッサコアが集積されたチップが研究されていて、これらは「メニーコアプロセッサ」と呼ばれます。
このようなチップ上の多数のプロセッサはNetwork-on-Chip(NoC)と呼ばれるネットワーク構造を用いてデータのやり取りを行います。松谷研では、このようなメニーコアチップを垂直方向にたくさん積層することを研究してきました。
世界的に見ても特にユニークなのがワイヤレス3次元NoCの研究です(下図)。これは、チップ内の水平ネットワークは従来通りのメタル配線を用いますが、チップ間の垂直ネットワークには慶應義塾大学電子工学科黒田研究室で開発された無線技術を用います。チップ間の接続が非接触の「ワイヤレス」であるという特徴を活かし、後からチップを入れ替え可能な計算機を研究しています。

※本研究は、情報工学科天野研究室と共同で進めています。2014年くらいまでは米国カーネギーメロン大学、南カリフォルニア大学とも共同研究を行っていました。